事業の紹介

Ⅰ.基本的事項

 

  1.被害者救済事業(公益目的事業1)

 

 (1)2つの重点事業

 

  ①全被害者を対象とする「自主的健康管理の援助事業」

 ■取組の目的

  被害者の加齢に伴い疾病の増加や重症化、定年退職などの社会生活の変化がみられます。特にがん、循環器疾患(脳血管疾患・心疾患等)、糖尿病などの生活習慣病が増加しています。また、高齢期における身体的機能や認知機能の低下にも留意が必要となっています。こうした被害者の実態を踏まえ、被害者が健康の主体者として自主的に健康管理の取組を進められるよう援助することを目的としています。

 ■救済事業協力員活動

 被害者が健康の主体者として、個々及び連帯して健康を守るという自主的健康管理を促進するため、森永ひ素ミルク中毒の被害者を守る会(以下、守る会)と協力して被害者の中から協会事業に理解があり活動する条件のある人を救済事業協力員に委嘱し、健診(検診)受診や協会事業への参加の勧奨、 「私の健康設計」 を活用した健康についての話題交流など、「呼びかけ」活動を重視して取り組んでいます。「呼びかけ」活動とともに、健康懇談会や自主的グループ活動などを活用して、救済事業協力員を中心に地域で被害者同士が連帯して支え合う「連帯して健康を守るネットワークづくり」を進めています。現在、全国で600人以上の被害者が救済事業協力員として活躍しています。

 ■健診(検診)受診とがん対策

 がん検診や特定健康診査等を受診するように働きかけながら、個々の対象者が健康の主体者として疾病の一次予防等の自主的健康管理と治療が進むよう、必要な相談活動を行います。がん対策として、肝炎ウイルス陽性者を専門医療機関等につなぐ取組や、禁煙対策に取り組んでいます。口腔衛生と口腔機能の維持・向上は、心身の健康と質の高い生活を保持する上で基礎的かつ重要な役割を果たしており、一層重視しています。

 ■保健医療費の支給

 自主的健康管理の援助の一環として、保険診療費など保健医療費を支給しています。

 

 ②障害のある被害者を対象とする「生活設計実現の援助事業」

 ■取組の目的

 被害者の人権が守られ、日常生活や社会生活に関して被害者自身の意思が尊重されることを重視して、本人が主体的に希望する生活を実現していけるよう援助することを目的としています。

 ■「私の生活設計と協会援助プラン」

 「誰と、どこで、どのように暮らすか」を自らの意思で選択・決定できるよう援助することを基本とし、被害者が、希望する「私の生活設計」を作成しています。ひかり協会は「私の生活設計」に基づいて、人権が守られ充実感があり、安心・安全な暮らしとなるよう「協会援助プラン」を被害者と一緒に作成しています。特に、生活の場・後見的援助の確保・変更や健康に関する課題のある対象者の、ニーズの実現を重視して取り組んでいます。健康課題については、糖尿病など生活習慣病を抱える知的障害や精神障害の対象者、二次障害やその不安を抱える肢体障害の対象者の取組を援助しています。また、口腔機能・口腔衛生の維持、特に誤嚥性肺炎を防ぐことを重視しています。

 ■地域の支援ネットワーク

 これらの高齢期を迎える障害のある被害者の様々な課題に対して、関係機関や専門家、行政、守る会の協力を得て地域の支援ネットワークづくりを進めています。また、障害福祉及び介護保険のサービスや成年後見制度等の活用を促進して、必要な介護態勢や後見の確保を援助しています。

 ■生活保障援助費の支給

 生活設計実現の援助の一環として、生活手当など生活保障援助費を支給しています。

          

(2)協力体制

 

①行政協力

 三者会談確認書には「厚生省は被害者対策にについて『守る会』の提唱する『恒久対策案』の実現のために積極的に援助し、かつ、救済対策委員会が行政上の措置を依頼した時はこれに協力することを確約する」とあります。この確認書に基づく行政協力を、国(厚労省)・都道府県・市町村の窓口課を中心としながら、総合的に進めています。今後被害者の高齢化や症状の悪化に伴う課題に対して、築き上げてきた行政協力を一層発展させ、相談活動などの事業が充実するように取り組んでいきます。

 具体的には、「私の生活設計と協会援助プラン」に基づくネットワーク会議や施設入所等の事前協議の実施、障害のある被害者等に対する定期的な保健指導、保健・福祉・労働等の行政サービスの円滑な利用などを、「森永ひ素ミルク中毒被害者対策対象者名簿」を活用して進めています。

 また、健診に関する情報提供や健康懇談会等への講師派遣など、被害者の自主的健康管理の促進のための協力を得ています。

 「行政協力の仕組みづくり」では、厚生労働省主催の森永ミルク中毒事件全国担当係長会議・都府県行政協力懇談会での要請や、厚生労働省通知に基づく介護保険に関する適切な相談対応など厚生労働省通知の活用にも取り組んでいます。

  

 「保健・医療・福祉・労働などの市町村の行政協力について」 

 

  健康管理手当関係通知

 

 住所不明者調査協力関係通知

 

 障害福祉・介護保険サービス適用関係通知

 

 ②森永ひ素ミルク中毒の被害者を守る会

 被害者団体である、守る会は、三者会談確認書にある「それぞれの立場と責任において、被害救済のために協力する」という確認に基づき、「救済事業の具体化の推進」に積極的な協力を得ています。特に、現地二者懇談会や救済事業協力員活動などの「事業推進の軸」の活動での組織的協力や、地域での「連帯して健康を守るネットワークづくり」など、救済事業の発展には必要不可欠な活動と言えます。

 本部二者懇談会・現地二者懇談会・ブロック二者懇談会等を通じて、守る会に意見要望の提起や事業への協力を得るなどの活動を重視して、ブロックの事業・運営について推進しています。また、救済事業に影響する社会保障制度改革等に対し、「三者会談」や行政協力懇談会において、守る会と連携して質問や要請を行うなどの協力体制を取っています。

 

 ③専門家

 丸山報告以来、協力専門家は、守る会運動を支える大きな役割を果たしました。専門家の協力体制としては、理事会の諮問機関としての救済事業専門委員会や飲用認定審査を行う認定委員会、調査研究事業に関わる専門家、現地事務所における地域救済対策委員会・地域専門委員・相談員などがあります。こうした様々な形で専門家が参加した体制によって救済事業の発展が図られています。

 具体的には、高齢期を迎える被害者の諸課題への対策や事業内容の検討、「私の生活設計と協会援助プラン」対象者への相談や事例検討、自主的健康管理の援助対象者への必要な専門的相談援助などを、計画的に行っています。

 

④「三者会談」の三者の協力

 保健医療制度・介護保険制度・障害者総合支援法等の社会保障制度の改革など、救済事業に大きな影響を及ぼす制度改革が進められており、三者会談確認書に基づく恒久救済事業が充実・発展するように、三者の協力を「三者会談」等を通じて要請しています。

 

 2.調査研究事業(公益目的事業2)

 

 森永ひ素ミルク中毒事件の医学的・社会的諸特徴を踏まえ、長期的な展望に立った救済事業を実施していくため、国の協力も得て、独自に必要な研究を行っています。定款第4条第6項に基づきこの事業を実施しており、被害者の救済事業に科学的根拠を与え、それをより発展させるために欠くことのできないものとして位置づけています。

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3.飲用認定事業(公益目的事業3) 

 

 森永ひ素ミルクを飲用したにもかかわらず、何らかの理由で患者名簿(1955年当時に厚生省が作成)に名前が登載されていない方に対して、本人からの申請があれば、当時の状況を認定するなどの審査を経て、ひかり協会が飲用者かどうかを判断しています。飲用者と認定された方は、ひかり協会の行う救済事業の対象者となることができます。飲用認定の申請書は都道府県を経由して、ひかり協会に提出されます。飲用認定申請についてお尋ねのある方は、ひかり協会本部(06-6371-5304)に連絡してください。

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Ⅱ.被害者救済事業の具体的事項

  被害者救済事業(公益目的事業1)の2つの重点事業を推進するために、具体的な救済事業を、以下のとおり実施しています。

 

 相談事業

 相談事業は、どんな相談にも応じる総合的な窓口をもち、人権を守り自立と発達を保障する救済事業実施の基本であると位置づけています。被害者の主体性・自主性を尊重して相談事業を行い、健康・生活・自立等の救済のニーズを実現します。

 また、被害者に直接対応する様々な活動と、必要な援助の条件をつくる活動とを互いに関連づけて取り組んでいます。

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保健・医療事業

 保健・医療事業は、乳幼児期のひ素中毒という健康被害の性格から、すべての被害者の保健予防及び健康の改善・保持のための援助を基本としています。 

 被害者の健康状態の特徴を踏まえ、すべての疾病、特に加齢に伴って増加する生活習慣病などの予防や、合併症などの重症化を防止することも重視しています。そのため、健康的な生活習慣の確立、保健予防、早期診断、治療、リハビリテーション等の総合的相談対応を行っています。

 救済事業協力員活動の活性化による連帯して健康を守る取組とともに、被害者が安心してよりよい医療を受けられるように、必要な相談と金銭給付基準に基づく健診(検診)費用や保険診療の自己負担分を援助しています。

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生活の保障・援助事業

 ノーマライゼーションや障害者権利条約の立場から、障害があっても社会への全面参加を保障し、基本的人権の享有と個人の尊厳の尊重を促進し、被害者の生活の基盤づくりに対する総合的な援助を行います。

 障害・症状のある対象者に「私の生活設計と協会援助プラン」を作成して、「生活の場」「後見的援助者」の確保・変更と日中活動の充実、生活習慣病や二次障害などの「健康課題」への対応など、生活設計実現の援助を行っています。

 また、障害・症状が重度であるために、日常生活が極めて困難な被害者に対して、生活基盤を確立し、自立と発達の保障を進めるために、生活保障・援助事業を実施しています。金銭給付基準に基づいて、日常生活の経済的基盤を保障・援助するための「ひかり手当」及び日常の生活に必要な後見・介護の確保や権利擁護などのために、「後見・介護費」を支給しています。「ひかり手当」には、「生活手当」や「調整手当」があります。

              詳細説明へ  施設入所等事務連絡

 

生活充実支援事業

 相談、保健・医療、及び生活の保障・援助などの各事業と関連させ、障害の状況に合わせた個別性の高い日中活動の充実を支援します。

 障害のある被害者の地域での充実した生活を実現・維持するための給付事業には、「施設利用助成金」「生活充実助成金」があります。

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 その他の事業

 ①二者懇談会、現地交流会

 二者懇談会は、ひかり協会と守る会が、それぞれの責任・役割に基づいて協力し、救済事業を円滑に進めるために設けられているものです。ひかり協会の毎年度の事業計画・予算に対する意見・要望をはじめ救済事業の方針・運営などの重要事項について懇談・協議を行います。救済事業の維持・発展に欠かすことのできない懇談会で、救済事業協力員活動とともに事業推進の「軸」と位置付けて重視しています。

 現地交流会は、被害者及び親族の交流と親睦を図るとともに、森永ひ素ミルク中毒事件や、守る会の運動の歴史、ひかり協会の救済事業についての学習の場として実施しています。

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②自主的グループ活動・ふれあい活動 自主的グループ活動は、被害者の自立と発達に役立ち、また連帯して健康を守るネットワークや障害のある被害者の地域での支援ネットワークづくりを進めるために、自主性・主体性、連帯の促進を図る自主的なグループ活動に対して、助成金を支給しています。

 ふれあい活動は、施設入所やグループホーム入居、また障害症状のために社会参加が困難な地域生活している障害のある被害者を訪問する活動です。守る会会員が障害のある被害者の生活や思いを知る機会として、守る会の組織的協力も得ながら進めています。

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③広報活動

 前例のない恒久救済をやりとげるため、被害者・親族だけではなく広く関係者に救済事業に関する情報を提供し、ひかり協会について一層の理解をしていただくことを目的に、広報事業を行っています。

 広報事業は、会報「ふれあい」、「恒久救済」誌とともに、各種パンフレットも作成し普及しています。

                  詳細説明へ

「保健・医療・福祉・労働などの市町村の行政協力について」 

「関係機関のみなさんへ―救済事業へご協力のお願い」

 

 金銭支給・助成の基準

 ①金銭支給・助成の基本

 金銭支給・助成の基準は、「40歳以降の被害者救済事業のあり方」に基づき、事業の重点の一つとして具体化したものです。したがってこの金銭給付基準は、総合的な救済事業の中に、正しく位置づけて実施することを基本としています。

 

②事業種目ごとの主な金銭支給・助成の構成

ア.保健・医療の事業に係る金銭支給

    ○検診費、検診付随費

     ○医療費、医療付随費

      ○健康管理費

イ.生活の保障の事業に係る金銭支給

      ○ひかり手当(生活手当、調整手当)

      ○後見・介護費(後見等援助費、介護福祉利用費、補足介護費、継続補足介護費

       継続介護費)

ウ.生活充実支援の事業に係る金銭支給

      ○施設利用助成金、生活充実助成金

エ.自主的救済活動促進の事業に係る助成

     ○被害者等自主的グループ活動助成金、ふれあい活動助成金、被害者救済活動助成金 

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 ③ひかり手当・健康管理費の対象者が生活保護を受給した場合の取り扱い

    ひかり手当対象者が生活保護を受給した場合、ひかり手当の支給は停止し ます。ただし高齢化に伴う健康課題に対応できるようにするため、「健康管理手当1級・2級」を支給します。健康管理費対象者が生活保護を受給した場合にも、健康管理費を停止し「健康管理手当3級」を支給します。

   「健康管理手当」については、 「健康管理手当支給実施要綱」 に基づき支給 しています。